テニス肘
(上腕骨外側上顆炎)・
ゴルフ肘
(上腕骨内側上顆炎)とは
テニス肘、ゴルフ肘はともにスポーツ障害の名称(通称)として知られています。テニスやゴルフのグリップ・スイングの動作を繰り返して発症することが多いことから、こう呼ばれています。
どちらも、運動時の肘の痛みを主な症状とします。悪化すると、日常生活中での物を掴む動作、手首を捻る動作などの際にも痛みが出るようになります。テニス・ゴルフ以外にも、似たような動作を繰り返すスポーツが原因となることがあります。
なお、病名としては、テニス肘が「上腕骨外側上顆炎」、ゴルフ肘が「上腕骨内側上顆炎」になります。
テニス肘とゴルフ肘の違いは?
簡単に言うと、テニス肘の場合は痛みが肘の“内側”に、ゴルフ肘の場合は痛みが肘の“外側”に出るという違いがあります。これは、それぞれのスポーツにおけるグリップ・スイングの繰り返しによって炎症が起こる部位が異なるために生じる違いです。
テニス肘・ゴルフ肘の原因
テニス肘の原因
ラケットを握って振るという動作を繰り返すことで、肘の外側にある上腕骨外側上顆に付着する腱が炎症を起こすことで発症します。また加齢によって腱の柔軟性が低下していることもリスク因子となります。
ゴルフ肘の原因
ゴルフクラブを握る、あるいは振るという動作を繰り返すことで、肘の内側にある上腕骨内側上顆に付着する腱で炎症を起こすことで発症します。またテニス肘の場合と同様に、加齢による腱の柔軟性低下がリスク因子となります。
テニス肘・ゴルフ肘に
なりやすい人
- 40代以上の人
- テニス、ゴルフの初心者
- 長く離れていたテニス、ゴルフを再開したばかりの人
- 頻繁(週3回くらい)にテニス、ゴルフをしている人
- 正しいフォームが身についていない人
- 身体に合った道具選びができていない人
- 家事をよくする人
テニスをしなくても
テニス肘になる原因は?
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、テニスをしている人だけに起こるものとは限りません。
以下のようなことが原因でテニス肘を発症するケースが見られます。
日常生活動作
「手首を外側に反らす動作」を繰り返すと、上腕骨外側上顆に付着する腱の炎症を引き起こし、テニス肘を発症することがあります。
長時間のデスクワークをする人、料理人、建築業に従事する人、職人などは、テニス肘になることが多いと言われています。
40代以降の女性
男女比で見ると、女性の方が料理や洗濯、掃除などの家事をする割合がまだまだ高いのが現状です。
家事は、「手首を外側に反らす動作」を強いられる場面が多く、また加齢によって腱の柔軟性が低下するため、40歳以降の女性はテニス肘を発症することが多いと言われています。
なおその他、卓球やバドミントンを原因としてテニス肘になる、あるいはゴルフを原因としてテニス肘になる、というケースも見られます。「テニス肘」「ゴルフ肘」というのは、あくまで通称であり、その原因は様々なのです。
テニス肘・ゴルフ肘の
症状チェック
テニス肘の症状
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、肘の外側の痛みを主症状とします。
- 肘の外側の痛み
- 物を掴む時に肘の外側が痛む
- 手首を捻る時に肘の外側が痛む
- 安静時の肘の外側の痛み
- 痛みで物を持てない・持ち上げられない
ゴルフ肘の症状
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)は、肘の内側の痛みを主症状とします。
- 肘の内側の痛み
- 物を掴む時に肘の内側が痛む
- 手首を内側に曲げる時に肘の外側が痛む
- 安静時の肘の内側の痛み
- 薬指や小指のしびれた感じ
テニス肘・ゴルフ肘を
放置すると
安静時も痛む危険が?
テニス肘・ゴルフ肘の症状が出ているのに運動を継続すると、痛みが慢性化したり、手術が必要になったりすることがあります。
無理をしてスポーツを継続することはもちろん、放置することも厳禁です。特に早期には、正しい方法での安静・固定が非常に重要になります。
症状に気づいたらスポーツを中止し、できるだけ早く上野会クリニックにご相談ください。
テニス肘・ゴルフ肘の
検査・診断
テニス肘やゴルフ肘が疑われる場合には、以下のような検査を行い、診断します。
手関節屈伸テスト(トムセンテスト)
患者様には、肘を伸ばした状態で、手首を外向きに上方へ反らしていただきます。一方で医師が自身の手で患者様の手首を下方への力を加えます。この時に肘に痛みが出るかどうかを調べる検査です。
チェアテスト
手首を伸ばした状態で椅子を持ち上げ、その時に肘に痛みが出るかどうかを調べる検査です。
中指伸展テスト
患者様には、手首、手指を伸ばした状態で腕を前方に出していただきます。医師が患者様の中指を上から軽く押し、その時に肘に痛みが出るかどうかを調べる検査です。
テニス肘・ゴルフ肘の治療
局所安静
もっとも重要なのが、局所の安静です。テーピングや肘用ベルトなどを使用し、手首・肘の安静を保ちます。
スポーツの中止はもちろん、日常生活においてもできるだけ安静に努めます。
薬物治療
消炎鎮痛剤の外用、内服などによる薬物療法を行います。
痛みが強い場合には、ステロイド注射を行うこともあります。
リハビリテーション
急性期にはアイシングを行います。
慢性期になると、温熱療法・電気刺激療法・光線療法といった物理療法、筋肉・腱のストレッチなどの運動療法を開始していきます。
手術療法
ここまでの保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術が必要になります。
関節鏡下で変性した組織を除去・修復する手術、骨棘を切除する手術などがあります。
テニス肘を早く治すための
セルフケア
前腕伸筋群ストレッチ
右腕の肘に症状が出ていると仮定します。左腕の肘に症状がある場合は、以下の手順内の「右腕(右手)」と「左腕(左手)」を逆にしてください。
- 右腕を前方に水平に伸ばして、手のひらを下に向けます。肘を曲げないように注意してください。
- 左手で右手の手のひらを掴み、その手のひらが身体側へと向くように手首を曲げます。前腕の外側が伸びていることを意識します。
- 手首だけでなく、手指も一緒に、身体側へと曲げます。
- 2と3に約15秒をかけ、これを3セット繰り返します。
前腕伸筋群の
筋肉トレーニング
右腕の肘に症状が出ていると仮定します。左腕の肘に症状がある場合は、以下の手順内の「右腕(右手)」と「左腕(左手)」を逆にしてください。
- 右腕を前方に水平に伸ばして、手のひらを下に向けます。その状態で、右手で、水の入った500mlのペットボトルを持ちます。
- 右腕を伸ばしたまま、約5秒かけて、右手の手首を上方に反らしてペットボトルを持ち上げます。
- 今度は、同様に約5秒かけて、手首を下方へと曲げます。
- 2と3を、3セット繰り返します。
ゴルフ肘を早く治すための
セルフケア
前腕屈筋群ストレッチ
右腕の肘に症状が出ていると仮定します。左腕の肘に症状がある場合は、以下の手順内の「右腕(右手)」と「左腕(左手)」を逆にしてください。
- 右腕を前方に水平に伸ばして、手のひらを上に向けます。肘を曲げないように注意してください。
- 左手で右手の手のひらを掴み、その手の甲が身体側へと向くように手首を曲げます。前腕の内側が伸びていることを意識します。約10秒保持します。これを3セット繰り返します。
サポーター
(エルボーバンド)
サポーターは、治療における安静だけでなく、ゴルフ肘の予防にも有効です。テーピングという方法もありますが、準備に時間がかかることと、ある程度の専門知識が必要であることから、エルボーバンドというサポーターを使用するのがおすすめです。
肘の内側にパッドが当たるように装着することで、クラブを握る時、スイングをする時の肘の負担を減らすことができます。