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便通障害

便秘とは

便秘とは便秘は一般に、「本来体外へと排出すべき便を十分量かつ快適に排出できない状態」を指します。便秘を「体質だから」と治療を諦めている人は少なくありませんが、原因を突き止め、適切な治療を行うことで改善は可能です。
また、便秘を長く放置していることで、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、直腸脱、憩室疾患などの原因となることもあります。
3日以上排便がない日が続いている、排便の量が少なくなった、残便感がある・スッキリしないといった便秘の症状でお悩みの方は、お気軽に上野会クリニックにご相談ください。

便秘の原因は?
考えられる病気

便秘は、便がつくられてから肛門から出るまでのいずれかの異常によって引き起こされる「機能性便秘」と、大腸の形態異常などによって引き起こされる「器質性便秘」に分けられます。
その分類によって、原因が異なります。

機能性便秘

大腸の蠕動運動の低下などによって、便がスムーズに運ばれなかったり、排出することが難しいために生じる便秘です。
ストレス、水分摂取量の不足、食生活の欧米化(高カロリー・高脂肪食、果物・野菜不足)、薬の副作用などを原因とします。ご高齢の方などで、極度の運動不足によって蠕動運動が低下し、便秘に至ることもあります。

器質性便秘

大腸の疾患、大腸の先天的な形態異常などを原因として起こる便秘です。具体的な疾患として、過敏性腸症候群、大腸がん、虚血性腸炎、腸閉塞症などが挙げられます。

便秘の分類表

引用:日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017

原因 症状の分類 病態の分類 原因疾患・病態
器質性 狭窄性 大腸がん
クローン病
虚血性大腸炎
非狭窄性 排便回数減少 巨大結腸症
排便困難 器質性便排出障害 直腸がん・S状結腸がん
小腸がん
直腸重責
巨大直腸
機能性 排便回数減少 大腸通過遅延 特発性
症候群(代謝・内分泌疾患、神経・筋疾患、膠原病、便秘型過敏性腸症候群など)
薬剤性(向精神薬、抗コリン薬、オピオイド系薬など)
大腸通過正常型 経口摂取不足、食物繊維摂取不足
排便困難 大腸通過正常型 硬い便による排便困難、残便感など
機能性便排出障害 骨盤底筋強調運動障害
腹圧低下
直腸感覚低下
直腸収縮力低下

考えられる病気

過敏性腸症候群

ストレスなどを原因として、腸の働きが低下する疾患です。
腹痛、下痢、下痢と便秘の繰り返しなどの症状が見られます。

大腸がん

大腸がんがある程度進行すると、がんによって便の通り道が狭くなり、排便の困難が生じることがあります。
その他、血便、下痢、便秘、下痢と便秘の繰り返し、便が細くなるといった症状が見られます。早期にはほとんど症状がないため、便潜血検査で陽性であった人は、必ず精密検査として大腸カメラ(内視鏡)検査を受けてください。

大腸がんについて
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虚血性腸炎

便秘などによって腸管の内圧が高まると、大腸の血流が低下し(虚血)、炎症や潰瘍を伴う虚血性腸炎を起こすことがあります。
左側腹部痛が特徴的な症状です。その後、便がなかなか出ない(しぶり便)、下痢、血便などの症状が現れます。

虚血性腸炎について
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腸閉塞症(イレウス)

腸のねじれ、腸の働きの障害などによって、便が適切に運ばれなくなった状態を指します。
便秘、腹痛、腹部の張りなどの症状が見られます。

便秘の症状

  • 便が3日以上出ていない
  • 排便回数が減った
  • 排便量が少なくなった
  • 排便後のすっきり感がない、残便感
  • 腹部の張り
  • おならのにおいがきつい

便秘の危険な症状

  • 突然便秘になり、まったく出ない
  • 便秘と下痢の繰り返し
  • 便が細くなった
  • 血便、粘液便
  • 腹部のしこり
  • 激しい腹痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 発熱

便秘の検査・診断

問診では、便の状態や回数、食習慣・生活習慣、便秘以外の症状の有無などをお伺いします。その上で、腹部レントゲン検査や大腸カメラ(内視鏡)検査を行い、診断します。
また糖尿病、甲状腺機能低下症などが疑われる場合には、血液検査も行います。

大腸カメラについて
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便秘の治療

大腸の疾患が見つかった場合には、その疾患に応じた治療を行います。それらの疾患の治療により、便秘の改善・解消が期待できます。
また便秘そのものに対する治療としては、薬物療法と生活習慣指導を行います。薬物療法では、腸内の水分量を増やす緩下剤、便の水分量を増やす浸潤性下剤、腸を刺激し働きを促進する刺激性下剤、漢方薬、浣腸などを使用します。
生活習慣指導では、食習慣を中心とした生活習慣の改善を、その患者様のライフスタイルに合った形で指導いたします。

便秘を解消する
食べ物・生活習慣

腸の働きを正常化する食事を摂ることが大切になります。腸内環境が整うことで、便秘以外の症状も起こりにくくなります。

1. 規則正しく三食を摂る

バランスの良い、十分な栄養を確保するためには、三食をしっかり摂ることが前提となります。
また、排便をスムーズにするためには、できるだけ決まった時間に三食を摂ることが大切になります。

2. 小まめな、
十分な水分補給

腸内、そして便の水分量を維持するためにも、十分な量の水分を補給します。一度に多量の水分を摂るよりも、小まめに少量ずつ摂る方が効果的です。
水分の排出を促すカフェインの摂り過ぎにも注意しましょう

3. 食物繊維を多めに
摂取する

食物繊維は水分をよく吸うため、便のかさが増し、スムーズな排便へとつながります。
食物繊維は大きく水溶性と不溶性に分けられますが、水溶性食物繊維は便をやわらかくする作用が、不溶性食物繊維は腸を刺激し排便を促進する作用が期待できます。ただし、痙攣性の便秘の方は、不溶性食物繊維の摂り過ぎに注意してください。

水溶性食物繊維
  • よく熟れた果物
  • 植物の種子
  • 葉物類
  • 根菜類
  • こんにゃく
  • 海藻

など

不溶性食物繊維
  • 野菜
  • 穀類、豆類
  • 小麦ふすま
  • ココア
  • ごぼう
  • きのこ類
  • 発酵食品
  • エビ

など

4. 腸を刺激しやすい食品
〜弛緩性便秘には
積極的に、痙攣性便秘
にはひかえめに〜

食品に含まれる酸や食品から発せられるガス、善玉腸内細菌がつくる有機酸などは、腸管を刺激してその働きを活発にします。痙攣性の便秘の場合には、不溶性食物繊維を含む食品など、腸を刺激する食品の摂取は控えめにしましょう。

  • 果物
  • 牛乳、乳製品
  • 芋類
  • 豆類
  • 酢、梅干し
  • 香辛料
  • アルコール
  • 油脂類
  • 炭酸飲料

下痢とは

下痢とは水分を多く含んだ便のことを「下痢」と言います。大きく、急性下痢と慢性下痢に分けられます。
急性下痢は細菌やウイルスの感染を主な原因とし、比較的短期間で症状の改善が期待できます。ただし、ひどい下痢が続く、下痢に加えて嘔吐があるといった場合には、脱水の危険もあるため、十分な注意が必要です。水分摂取さえ困難な場合には、点滴治療が必要になります。

下痢の原因は?
考えられる病気

一時的な下痢

暴飲暴食、刺激物の摂り過ぎ

暴飲暴食、辛い物・冷たい物の摂り過ぎは、胃酸の分泌を過剰にしたり、胃腸の蠕動運動を過剰にするなどして、下痢の原因となることがあります。
また、疲労時やストレスを抱えている時は、胃腸が過敏になっています。

身体の冷え

身体が冷えると胃腸の血行やその働きが低下し、下痢の原因となることがあります。
特に夏場は、エアコンの効いた部屋で過ごす時間が長くなったり、冷たい物を口にする機会が多くなるため、カーディガンやひざ掛けを用意しておく、冷たい物を摂りすぎないといった対策が必要です。

ストレス・生活リズムの乱れ・
睡眠不足

ストレス、生活リズムの乱れ、睡眠不足はいずれも、自律神経を乱す原因となります。自律神経が乱れることで、腸の機能が低下し、下痢や便秘を引き起こすことがあります。

疾患による下痢

感染性胃腸炎

急性のものの場合、ノロウイルス、アデノウイルス、カンピロバクター、サルモネラ、0-157などの病原体の感染が原因となります。激しい吐き気のあるケースではウイルス性を、高熱を伴うケースでは細菌性大腸菌の感染を疑います。
アメーバ赤痢、腸結核などを原因とする場合には、症状が慢性的に持続することもあります。

潰瘍性大腸炎

慢性的な粘血便が特徴的な病気です。発熱を伴うこともあります。
はっきりした原因は未だ解明されていませんが、食事などの環境因子、遺伝的な要因、腸内細菌叢などの要因が絡み合い、免疫異常を起こして発症するものと考えられています。クローン病とともに炎症性腸疾患に分類され、厚生労働省の難病の指定を受けています。
20~30代での発症が目立ちますが、子どもや50代以降でも発症することがあります。

潰瘍性大腸炎について
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クローン病

代表的な炎症性腸疾患であり、潰瘍性大腸炎とともに厚生労働省より難病の指定を受けています。
下痢や血便、腹痛などの症状が主となります。また潰瘍性大腸炎と同様に、食事などの環境因子、遺伝的な要因、腸内細菌叢などの要因が絡み合い、発症に至るものと考えられるものの、はっきりとした原因は未だ解明されていません。
潰瘍性大腸炎の違いとして、大腸を含めた口から肛門までのいずれかの消化管で炎症が起こり得る点が挙げられます。その中で頻度が高いのは大腸と小腸です。
10~20代での発症が目立ちます。また、やや男性に起こりやすい病気です。

大腸がん

大腸がんには、下痢と便秘と交互に現れるという特徴的な症状があります。その他、血便、便が細くなるなどの症状も挙げられます。ただし、もともと大腸がんは症状に乏しいがんであることに注意が必要です。便潜血検査で陽性であった人は、他に症状がなくても、必ず精密検査として大腸カメラ(内視鏡)検査を受けてください。

大腸がんについて
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過敏性腸症候群

腹痛や腹部の張りなどの症状に加え、下痢や便秘といった排便障害が数カ月続いている病態を指します。
炎症や腫瘍などの可能性を除外する必要があるため、大腸カメラ(内視鏡)検査・血液検査などを行い、診断します。
主な原因として、感染性腸炎の罹患、緊張・不安、ストレス、睡眠不足などが挙げられます。

膵臓の病気

慢性膵炎、膵臓がんなどで膵外分泌機能が低下し、消化不良や下痢が生じることがあります。
灰色っぽい、水に浮かぶ便という特徴的な便の異常が認められます。

下痢の症状

下痢の症状
  • 激しい下痢、下痢が止まらない
  • 高熱、腹痛、腹部の張り
  • 吐き気、嘔吐
  • 排便後も腹痛が続く
  • 同じものを食べた人が同時に下痢になった
  • 症状が悪化している
  • のどの渇き、尿が少ない
  • 水を飲むのも辛い

下痢の検査・診断

問診では、症状、食事内容、既往歴、服用中のお薬などについてお尋ねします。
その上で、血液検査、超音波(エコー)検査、大腸カメラ(内視鏡)検査などを行い、診断します。
身近な症状である下痢ですが、背景に大腸がんなど重大な病気が隠れていることもあります。様々な疾患の可能性を考慮しながら、日本消化器内視鏡学会専門医が丁寧な検査・診断を行いますので、どうぞご安心ください。

下痢の治療

下痢の原因となる疾患が見つかった場合には、その疾患に応じた適切な治療を行います。
特に原因となる疾患が見つからなかった場合には、腸の蠕動運動を抑える薬、腸への刺激を抑える薬、便の水分を吸い取る薬、整腸剤などを症状に応じて選択・処方します。
なお、ウイルス性の下痢の場合には、ウイルスの体外への排出を妨げないよう、あえて下痢止めを使用しないこともあります。
脱水症状が見られる場合には、点滴を行います。

下痢になったときの食べ物

下痢の時には、うどん、お粥、食パンなどの消化の良い食べ物、卵・豆腐などのタンパク質が豊富な食べ物を中心としてメニューを考えます。
症状が多少改善すれば、魚や肉、野菜も食べられます。脂肪の少ない赤身肉や鶏肉、白身魚、繊維の少ない野菜(白菜・ほうれん草・にんじん・大根・カボチャなど)がおすすめです。

便秘と下痢を
繰り返すと…?

便秘も下痢も、食生活の乱れや一時的なストレスなどを原因として起こるものであれば、その原因を取り除く・改善することで、症状も和らいでいきます。
しかし、便秘や下痢の症状が何週間も続く、昔から何年も悩んでいるといった場合には、何らかの異常が起こり、またその状態が続いていることを意味します。「検査を受けて!」という身体からのサインとして認識し、お早めに上野会クリニックにご相談ください。
特に便秘と下痢を繰り返す場合には、大腸がんやクローン病、肝臓がんなどの重大な疾患が原因となっていることもあります。当院では、症状や食習慣、既往歴などをお伺いした上で、必要に応じて大腸カメラ(内視鏡)検査や血液検査などを行うことができます。少しでも気になる時には、どうぞお気軽にご相談ください。